DTMの意味

DTMとは「デスクトップミュージック」(Desktop Music)の略です。
細かい定義はあるかもしれませんが、要するにパソコンを使って音楽を作ること全般をDTMと呼びます。
一昔前はコンピューターミュージックとも呼ばれていました。

DTMは「打ち込み(打ち込み系)音楽」とも呼ばれます。
パソコンのキーボードやマウスで音符情報を一つ一つ入力していく作業を「打ち込んでいく」と表現したことから来ています。
打ち込まれた音符の通りにパソコンなどの機械が音楽を演奏します。

■DTMソフトのイメージ図
DTMソフトのイメージ図

厳密に言えばパソコン限定ではありません。
おおむね「演奏情報を打ち込まれたデジタル機器が音を演奏する」ならばDTMに含めることが多いです。

古くはヤマハのハードウェアシーケンサー「QYシリーズ」や、現在でもハードウェアのワークステーション(DAW)など、パソコンを用いないものも存在します。
(これらは「打ち込み」ではあるが「DTM」ではない、とする人もいます)
最近はスマホにもDTM用アプリが多数リリースされており、「パソコンで」というのは大前提ではありません。

昔の打ち込み音楽と言えばスーパーの店内で流れるBGMのような感じで、いかにも安っぽい、機械っぽい音でした。
しかし今はパソコンの高性能化が進み、DTM関連の機材やソフトも高機能、高音質化しています。
使用する機材や技術次第では、生演奏とほとんど聞きわけが出来ないレベルに仕上げることも可能です。

さらに、今では生ギターや生ボーカル(人の歌声)などの録音もDTMで出来ることの範疇になっています。
これはもうプロの音楽制作の方法とほとんど同じで、プロのミュージシャンのレコーディング(演奏の録音)作業でもテープではなくパソコンに直接録音する手法は今では一般的です。
(ただしプロのレコーディング作業はあまりDTMとは呼びません)

もちろん、録音した生演奏と打ち込み演奏とを組み合わせてひとつの曲を作ることもできます。
自分の弾ける楽器は生録音で、弾けない楽器は打ち込みで、と使い分けることができます。
今ではパソコン一台でCD並みのクオリティの楽曲を作ることも可能になっています。

ここまで、簡単にまとめると

  • DTMとは「デスクトップミュージック」の略
  • パソコンを使って音楽を作ること全般と思って良い
  • パソコンの高性能化に伴いDTMで出来ることが大幅に広がった
  • (技術と機材があれば)CD並みのクオリティの音楽が作れる

DTMで出来ること

  • ゼロから自分の思い通りに音楽を作る
  • 既存の楽曲をコピーする(いわゆる耳コピ)
  • 耳コピした音源でカラオケを楽しむ
  • 音を加工して効果音を作る
  • 生ギターやボーカルなどを録音、編集する
  • パソコンにギターをつないでアンプの代わりにする
  • たぶん音(作曲)に関することなら大抵のことが出来る

DTMのメリット

音楽初心者でも作曲を楽しめる

音楽を作るとなると、普通は何かの楽器を用意して演奏しながら作ります。
当然、ある程度その楽器を弾ける必要があります。
楽譜の読み書きの知識も必要です。

DTMで必要なのはとりあえずパソコンだけです。
楽器やその演奏技術、楽譜の読み書きの知識がなくても音楽を作ることができます。
(もちろんこれらの技術や知識はあるに越したことはない)
ただし最低限のパソコンの知識は必要です。

一人でもいろんな曲が作れる

楽器の演奏技術を磨いても、演奏できるのは練習したその楽器だけです。
ギターやピアノのソロや弾き語りならば作れても、バンド系などの多くの楽器を使用するような楽曲を作ることは難しいです。
(使用するすべての楽器を練習しないといけない)

DTMならば、一人でいろんな楽器の音を鳴らすことができます。
バンドサウンドも可能ですし、オーケストラのような大編成の楽曲だって作れます。
楽器が変わっても基本的な打ち込み方法は変わりませんから、新しく打ち込みの技術を磨く必要はありません。

■DTMはいろんな楽器の音を演奏できる
DTMはいろんな楽器の音を演奏できる

ちなみにボーカル(人の歌声)の作成に関してはやや特殊で、「アー」とか「ウー」などの歌詞のない声(コーラス)であればある程度は作れます。
思い通りの歌詞を歌わせることは従来のDTMではできなかったのですが、近年はボーカロイドなどのボーカル作成専用の特殊なソフトを使用することで歌詞付きの歌声も作成できるようになっています。
ただしボーカロイドは有料ソフトです。
もちろん、自分で歌うか誰かに歌ってもらって録音することは可能です。

無料で始められる

楽器は買わなければ手に入りませんが、DTMソフトはフリーソフト(無料のソフト)がネット上でいろいろと手に入ります。
無料ソフトだけでも十分にDTMを楽しめますし、人によってはわざわざ有料ソフトを買うメリットがないと感じるかもしれません。

さすがにパソコン一台でプロ並みの音を、と考えるなら有料ソフトの購入も考える必要がありますが、最初はタダというのは初心者の人にとっては大きなメリットでしょう。

楽器の録音もできる

楽器が弾けるなら演奏をパソコンに録音することができます。
録音した音に、さらに別の音を重ねることもできます。
分かる人向けに言えば、パソコンをMTR(マルチトラックレコーダー)の代わりにして多重録音ができるということです。
自分の弾けない楽器パートは打ち込みで作って、それを生演奏の録音データと合わせた楽曲の作成もできます。

単純に録音するだけでなく、録音したオーディオデータは後で編集することができます。
何度か録音して上手く演奏できたテイクをつなぎ合わせる…なんてこともできます。
これらの編集も音楽ソフト(DAWという)の画面上で行えますので、直感的に操作できます。

ただしマイクやケーブルなどの録音機材は別途必要になります。
これらは無料というわけにはいきません。

パソコンを楽器や機材にもできる

パソコンにMIDIキーボードという機材を接続すれば、キーボードの演奏を即座に楽器の音にして演奏することができます。
ピアノやオルガンなどの音色はもちろん、ギターやドラムなどの音色を演奏することも可能です。

エレキギターをパソコンにライン接続して、音色を加工してギターエフェクター代わりにすることもできます。
アンプシミュレーターというエフェクターを使えばアンプに接続することなくリアルな音色をそのままパソコンに録音することもできます。

DTMの注意すべき点

作曲自体はお手軽ではない

DTMソフトはボタンひとつでどんな音楽でも簡単作れるようなものではありません。
楽器と同じで音楽を作る上での道具のひとつです。
簡単に音楽を作れるソフトもありますが、頭の中でイメージした通りの音楽を形にしようとするならばソフトや機材を使いこなし、ある程度の音楽理論は勉強する必要があるでしょう。

とはいえ、DTMソフトには視覚的に分かりやすい画面が用意されています。
打ち込んだ音符をすぐに演奏して「音」にすることができるので、作曲未経験者にとっては五線譜に音符を書いていくよりは作業がしやすいと思います。

何でもそうですが、始めたばかりでいきなりすごいものを作ろうとすると大抵は挫折します。
音楽は楽しむものということを忘れずに、少しずつ知識や技術を身に付けていきましょう。

打ち込みは生演奏の音には勝てない(かもしれない)

すでに書いた通り、最近のDTMの機材やソフトは優秀なものが多く、打ち込みでもかなりリアルな演奏をさせることができます。
しかしこれらの機材は結局のところ「生演奏に近づけること」を目標にして作られています。
打ち込みの演奏は生演奏と並ぶクォリティに仕上げることは出来ても、生演奏に勝つことはありません。

もちろんこれは生演奏が最高であるとした場合の話で、人によって感性は異なります。
機械的な演奏が良い場合や生演奏では再現不可能な音が必要な場合は打ち込みの方が優れている場合もあるでしょう。
生演奏の音が必要とされている場合には生演奏には勝てませんが、楽器の録音環境がなくても、あるいは楽器が弾けなくてもその楽器の演奏パートを作れるというのはDTMにしかないメリットです。
(ヘタな演奏を録音するくらいならいっそ打ち込みのほうが良いという場合もあるかもしれません)

お金がかかる可能性も考える

最初は無料で始められますが、本格的にやろうとすればお金が結構かかるかもしれません。
無料ソフトが数ある中、有料のソフトもたくさん販売されています。
無料ソフトだけでも結構イケますが、有料ソフトはやはり優秀ですので慣れてくると欲しくなってくるかもしれません。

ソフト以外にもハード(パソコンに外部接続する機械)もあり、これらを揃えるとそこそこお金がかかります。
たとえばMIDIキーボードという機材は、ピアノが弾けなくても作曲をする上で便利なのでできれば欲しいものです。

当サイトではDTM初心者の人でも気軽に始められるように、無料で出来ることを中心に説明しています。

音楽製作の知識はやはり必要

音楽を一曲作るというのは作曲の知識が必要です。
さらにいろいろな楽器知識、アレンジの技術が必要になり、さらにミキシングなどの音を調整する技術も必要です。

バンドメンバーを集めて曲を作るのなら、メンバーで作業を分担してそれぞれのメンバーが得意なことを上達させていけば曲のクォリティはおのずと上がります。
しかしDTMは基本的に全部の作業を一人で行いますので、勉強すべきことがたくさんあります。

とはいえ、全部一人でやらなければならないという決まりはありません。
すでに説明した通り、DTM(と同等のシステム)は今では一般的な音楽制作の道具のひとつで、バンド活動やプロの現場でも活用されています。
仲間とデータを共有してそれぞれの得意なパートを作ることもできます。
身近に楽器演奏が出来る人がいるなら、演奏してもらってそれを録音することもできます。
ミキシングなどは他人に依頼することもできます。

DTM特有のデメリット(解決できない問題)というのは少ないですが、なんでも簡単に実現できる…というものではないことは頭に入れておきましょう。

DTMのメリット/デメリット

  • 一人でもいろんな楽曲を作れる
  • しかし簡単に音楽が作れる魔法のツールではない
  • 楽器や楽譜の知識は必須ではないが、当然出来たほうがよい
  • 無料で始められるが、機材や有料ソフトを購入していくと当然お金がかかる
  • 高価な機材を導入する=クオリティが上がる、にはならない
    (使いこなせなければ宝の持ち腐れ)
  • 逆に安い機材やフリーソフトなどでも使いこなせば高価な機材にも引けを取らない
    (こともある)