シーケンサーとDAW

いままでの説明の中で「DTMソフト」としてきたものは一般的には「MIDIシーケンサー(単にシーケンサーとも)」または「DAW」と呼ばれます。
両者に明確な線引きがあるのかはよくわかりませんが、MIDIとオーディオを扱えるものをDAW、MIDIのみを扱えるものをMIDIシーケンサーと呼んでいることが多いようです。
しかしオーディオを扱えるのにシーケンサーと呼んでいたり、オーディオシーケンサーなどというよくわからない言葉もあります。
感覚的にはシーケンサーがより高機能になったものをDAWと呼んでいるようです。

両者の違い

シーケンサー

各ソフトによって当然出来ることは違ってきますが、シーケンサーに最低限出来ることはどのソフトも同じようなものです。
MIDIシーケンサーで出来ることは

  • MIDIデータの打ち込み、再生、録音
  • スタンダードMIDIファイルの読み込み、書き出し

いわゆる「打ち込み系音楽」の「打ち込み」作業をするためのソフトです。
MIDIデータを「打ち込む」から打ち込み系音楽と呼ばれます。
一昔前のDTMと言えばこのMIDIシーケンサーを使用することを指していました。

基本的にMIDIに関することは大体出来るようになっています。
MIDIの録音というのは、MIDIキーボードなどの演奏を記録することで、一度記録すれば後から何度でも演奏を再現できます。
記録した演奏情報を手動で手直しすることも出来ます。

これらの機能はシーケンサーとして必要最低限のもので、ソフトによってはMIDIデータの入力支援機能などがついていたりします。

すでに説明した通り、MIDIは「音」ではなく演奏の情報なので、「MIDIの録音」というのは厳密に言えば間違いで「MIDIの記録」が正しいです。
が、よく録音と表現されます。

スタンダードMIDIファイル

シーケンサーソフトに打ち込まれたMIDIデータを保存する場合、ほとんどのシーケンサーは(何もしなければ)シーケンサーソフト独自の形式のファイルで保存されます。
これにはMIDIデータのほかにシーケンサーソフトの設定等の情報が含まれるためです。
このファイルはそのシーケンサーソフト専用の形式なので、別の種類のシーケンサーソフトでは読み込むことはできません。

スタンダードMIDIファイルとは、シーケンサーソフトの種類に関係なく、どのソフトでも読み込みが可能なMIDIファイルの形式です。
略してSMFとも表記され、拡張子は「.mid」または「.midi」です。

スタンダードMIDIファイルは、単純にMIDIに関する情報のみが記録されているファイルです。
MIDIは共通の規格ですから、MIDIに対応したソフトならば読み込むことが出来ます。
例えば他人にMIDIデータを渡すとき、ソフト独自形式のまま渡すと相手も同じソフトを持ってないとファイルを開くことができません。
スタンダードMIDIファイル形式に変換して渡せばこういったトラブルを防ぐことが出来ます。
MIDIを扱えるソフトであればほとんどの場合でスタンダードMIDIファイル形式で保存する機能があります。

DAW

DAWはデジタルオーディオワークステーションの略で、「ダウ」とか「ディーエーダブリュー」「ディーエーダブル」などと発音します。
DAWは上のシーケンサーソフトの機能に加えて

  • オーディオファイルの読み込み、録音、書き出し
  • オーディオデータの編集、加工、ミックスダウン

の機能があります。
「ミックスダウン」とは複数の音の音質やバランスを整えて聞きやすくする作業です。

シーケンサーのMIDI機能にオーディオ機能が加わったものがDAWです。
これももちろん各ソフトにより違いはありますが、基本的に「音に関することなら大抵のことが出来る」ものとなっています。
最近のDTMはこのDAWを使ってMIDIの打ち込みやオーディオの録音・編集などをまとめて扱うのが主流になっています。

ちなみにオーディオを扱えるがMIDIは扱えない、というソフトは波形編集ソフトと呼びます。
これで音楽制作も可能ですが、DTMではあまり使われません。

最初はフリーソフトで十分

具体的にどのソフトを選べばいいでしょうか。
いきなり有料のパッケージソフトを選ぶ手もありますが、最初はフリーソフトにすることをおすすめします。
シーケンサーとDAWの両方にフリーソフトがあります。

有料ソフトのほうが高機能なのは言うまでもありませんが、高機能ゆえに操作がわかりにくかったり、初心者には必要ないような機能ばかりだったりします。
DTMは通常のパソコン操作とは違った知識が必要になります。
お金を出して高機能なソフトを購入したのはいいが、全然使いこなすことが出来ず宝の持ち腐れになってしまうかもしれません。

フリーソフトといってもどれも必要な機能は大体揃っています。
最初は気軽にフリーソフト、慣れてきて機能に不満が出てきたら有料ソフト…というのがいいと思います。

まとめ

  • MIDIを再生、編集、録音などが出来るものをシーケンサーソフトという
  • 加えてオーディオの再生、編集、録音などが出来るものをDAWソフトという
  • どのソフトでも読み込み可能な形式のMIDIファイルをスタンダードMIDIファイルという