ストリングス類の特徴

ストリングスとは直訳で糸やひも(の複数形)のことで、音楽で言えば弦楽器の意味ですが、特にヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスなどのクラシック音楽で良く使われる弦楽器を指します。
ハープや、弦楽器ではないですがティンパニもここにまとめられています。

ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバス

弦を弓で擦ることで音を出す擦弦楽器です。
これらは「ヴァイオリン属」と呼ばれ、大きさ以外は共通する部分が多く、音色も似ています。
(厳密にはコントラバスはヴァイオリン属ではないそうですが)
大きさが違うので当然音域は異なり、ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ→コントラバスの順に低くなっていきます。

ヴァイオリンは「Vl」「Vn」
ヴィオラは「Va」「Vla」
チェロは「Vc」
コントラバスはコンバスやバス、ダブルベースとも呼ばれ、「Cb」
とそれぞれ略記されます。

どれを使うかは演奏したい音域で選ぶことになります。
逆に、楽器の音域に合わせたフレーズにしないと実際には演奏する事が出来ない曲になることもあります。

MIDI音源、特にGMなどのDTM音源は、楽器が本来出せる音域を越えても音が出せるものが多いです。
打ち込みで音楽を作っているとそれらの楽器の音域を越えた音も気にせずに使ってしまいがちですが、生演奏を再現するという点からリアルにしたいなら、できるだけ本来の音域内に収めるようにしたほうが良いです。
もちろん生演奏出来なくても構わない、出来上がりが良ければそれでいいという考え方もあります。

オーケストラなどではひとつの楽器パートを何人もの人数で演奏しますが、ここに収録されているのはソロ(独奏)の音色です。
合奏の音が欲しい場合は次のカテゴリ(アンサンブル)に収録されています。

音を長く延ばす事が出来るので、MIDIで打ち込みする場合はエクスプレッション(抑揚)表現が重要になる楽器です。

ストリングスの編成

編成に特に決まりがあるわけではありませんが、古くから用いられてきたセオリーというものはあります。
たとえば弦楽四重奏では「1stヴァイオリン」と「2ndヴァイオリン」「ヴィオラ」「チェロ」の4つが使われます。
コントラバスは使われません。

このようにヴァイオリンを2つのパートに分けるのは非常によくあるパターンで、クラシックの多くの楽曲でこの編成(にプラスしてコントラバス)になっています

左右の配置にはいくつかのパターンがあり、最も多いのが左端から順に、1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、の並びです。
コントラバスは右奥か左奥に配置されます。

これは古典的な配置で、近代ではヴァイオリンを両翼に配置する方法もあります。
つまり左端から順に、1stヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、2ndヴァイオリン、の並びです。

配置には特に正解と言うものはなく、演奏する楽曲に合わせて考えるのがいいでしょう。
特にポピュラーミュージックではほとんど気にしなくてもいいくらいです。

ストリングスの奏法

ピチカート(pizzicato)

ヴァイオリン属は基本的に弦を弓で擦って音を出しますが、ピチカートは弦を指ではじいて音をだします。
「ポンッ」という短い音が出ます。

GM音源にはピチカート奏法が収録されていますので、これを使用します。
ただし合奏(複数のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどで、同じ音を同時に演奏したもの)のみが収録されている場合がほとんどで、ソロの音色はストリングス専用音源以外では含まれていない可能性があります。

スタッカート

音を短く、歯切れよく弾く奏法です。
本来の音符の大体半分ほどの長さで演奏されます。
(四分音符にスタッカート記号があれば、八分音符の長さで歯切れよく演奏する)

MIDIではデュレーションを短くするだけですが、ややベロシティを強めにしてもいいでしょう。
リリースタイムやエクスプレッションの調整でリリースを調整してもいいです。
エクスプレッションで音量をバッサリと落とす方法もあります。

トレモロ

同じ音程の音を細かく何度も刻むように弾く奏法です。
GM音源にはトレモロ奏法が収録されていますが、これも合奏のみの収録で、ソロのトレモロ奏法は収録されていない可能性があります。
ソロの音色が欲しい場合はヴァイオリンなどのソロ楽器で短い音符をたくさん並べることで再現します。
ベロシティは均一ではなく強弱を繰り返させると良いでしょう。

ポルタメント

ある音程からある音程へと、滑らかに音程変化させながら繋ぐ奏法です。
ストリングスでは多用は下品であるとされ、あくまでさり気なく入れるのが良いです。

MIDIではピッチベンドで再現します。
ポルタメントメッセージでも再現は可能ですが、入力が面倒くさくなります。

レガート/スラー

音符同士を途切れさせずに滑らかに繋ぐ奏法です。
MIDIではただデュレーション(音符の長さ)を100%にするだけですが、音色によっては繋がりが悪い場合もありますので、その場合は100%以上の長さにしても構いません。

さらに滑らかな演奏にしたい場合は、1つの音符を入力してピッチベンドで音程を変化させます。
このとき、ポルタメントのように滑らかに変化させるのではなく一気にピッチを上下させます。
こうすると2つ目の音のアタックがなくなります。

スピッカート/サルタート

スピッカートは弦の上で弓をはずませ、跳ねるように弾く奏法です。
サルタートも同じですが、スピッカートは弦ではずませた後に弓が離れるのに対して、サルタートは弦から弓を離しません。

MIDIで再現する場合はエクスプレッションを細かく調整するか、リリースタイムを調整するかのどちらかになります。
リリースタイムの調整に対応していない音源ではエクスプレッションを調整するしかありません。

グリッサンド

ある音程からある音程へと滑らかに音を繋ぐ奏法です。
楽譜上では到達目的の音程指定がない場合もあります。

ヴァイオリンはフレットレスなので、MIDIではそのままピッチベンドで再現しますが、あまり大きい音程変化だとやはり不自然になってしまいます。

ビブラート

他の楽器と同様に、音程を揺らす奏法です。
ヴァイオリン属では特にビブラートは重要で、全体的に薄くビブラートを掛けておいても構いません。

MIDIではモジュレーションか、NRPNのビブラートで再現します。
(→ビブラート)

サンプル曲

■ストリングスの例

前半が弦楽四重奏にコントラバスを加えた演奏です。
左から順に「1stヴァイオリン」「2ndヴァイオリン」「ヴィオラ」「チェロ」、真ん中やや右に「コントラバス」の配置です。
後半も同じ演奏ですが、音色が楽器単一ではなく合奏のものになっています。

■ピチカート奏法の例

楽器の配置は上のサンプル曲と同じで、合奏の音色による演奏です。

ティンパニ

オーケストラでよく用いられる打楽器で、大きな太鼓のような形をしています。
通常、太鼓には音階がありませんが、ティンパニははっきりとした音程を持っており、これを調整しながら演奏します。
ひとつのティンパニでも音程を変える事ができますが、複数のティンパニを並べて演奏する事が多いです。

大きな太鼓なので、迫力のある重低音が出せます。
調整によって1オクターブ程度音程を上下させることができます。

■ティンパニの例