より表現の幅を広げるために

MIDIでの基本的なコントロールチェンジやメッセージを紹介してきました。
他にもまだいくつかありますが、今まで紹介してきた機能だけでだいたいのことは実現できます。

ひとつのコントロールだけでは大した効果はなくても、組み合わせ次第でかなり表現の幅は広がります。
特にベロシティ、エクスプレッション、ビブラートあたりをしっかりと打ち込むだけでもだいぶ違います。

他にはアフタータッチやブレスコントロールなどの制御方法もMIDIでは用意されています。
しかし対応する音源が少なく活用する機会もあまりないので説明は省きます。
アフタータッチはピアノやキーボード専用の高級音源に搭載されていることがあります。

アタックタイム(CC73)、ディケイタイム(CC75)、リリースタイム(CC72)を調整できる音源もあります。
これを活用すれば変わった音作りをする事が出来ます。
これらはアナログシンセを扱う上では重要なパラメーターです。
詳しくは用語集 - エンベロープを参照。

人間の演奏を再現するという点で考えると、発音タイミングやノートの長さ(デュレーション、ゲートタイム)も重要となります。
人間は機械のように曲のテンポに合わせてジャストタイミングで音を出すことはできません。
実際にはごくわずかなズレがあるはずです。

とはいえ発音タイミングは特に目立つパートだけ、あるいは仕組み上タイミング調整しないと不自然になる楽器だけ(アコギのストローク奏法など)、という程度でも十分だったりします。
こだわるのならタイミング調整をしてみましょう。
理想はMIDIキーボードからリアルタイム入力ですけれどね。

ノートの長さも楽器によっては重要となります。
あまりダラダラと延ばしてしまうとノリが失われます。
特にトランペットなどの金管楽器では重要です。

また打ち込みだけでなくその後のミックス作業でも出来は大きく変わります。
(また別の機会に説明します)

MIDI規格にはない表現方法

MIDI規格にはない…というよりも、MIDIの仕組みを利用していろんな奏法を再現出来るようにしたシンセもあります。
ベロシティのページで説明したベロシティスイッチもそのひとつです。
これはベロシティの強弱を利用して再生サンプルを切り替えることでリアルさを表現することができます。

ほかにはキースイッチという方法がよく用いられます。
通常の楽器ではまず使われないような低い音程、または高い音程のノートに対して、音ではなくサンプル切り替えのスイッチを割り当てる方法です。

■キースイッチの例
キースイッチ

スイッチとなるキーを押している間は対応する奏法のサンプル音に切り替わり、キーを離すと通常の奏法のサンプル音に戻ります。
押しっぱなしではなく、キーを押すごとに奏法が切り替わる(元の奏法に戻すにはもう一度キーを押す)方式のものもあります。
(トグルスイッチ)

従来はその奏法ごとにプログラムチェンジナンバーを割り当て、それぞれのトラックを用意し、奏法が変わるごとに演奏トラックを切り替える、といった非常に手間のかかる方法で打ち込みする必要がありました。
しかしキースイッチならひとつのトラックだけで打ち込みができます。
キーボードが演奏できるなら、リアルタイムにサンプルを切り替えながら演奏するということも可能になります。

キースイッチと似た方式としてVSTエクスプレッションというものもあります。
仕組み的にはキースイッチと似ていますが、キースイッチよりも柔軟で、分かりやすい専用の編集画面が用意されているのが特徴です。

ただし対応音源はあまり多くありません。
また使用できるDAWにも制限があります。

コントロールチェンジ番号について

GM規格(GS、XG、GM2含む)ではコントロールチェンジの番号ごとにどのメッセージ(機能)を割り当てるかはあらかじめ決められていますが、これら規格に対応していない音源の場合はどの番号にどの役割が割り振られているかはわかりません。
番号の割り振りが独自のものであったり、ユーザーが自由に番号を割り振れる機能を持った音源もあります。
特定のメッセージには対応していない音源もあります。

だいたいは説明書に書いてありますが、英語版しかない音源もありますのでその場合はなんとか頑張りましょう…。
ネットで検索すればヒントが見つかるかもしれません。