その他の回路

VCO、VCF、VCA、LFO、エンベロープジェネレータと説明してきましたが、これでアナログシンセの基本的な回路の説明はほとんど終わりです。
これらを使いこなせば後はバリエーションで様々な音が作れます。

残るはそれほど重要というわけではないですが、音作りの幅を広げるために知っておいた方がいい回路、機能を紹介します。
(これら機能が搭載されていない機種もあります)

ノイズジェネレータ(Noize Generator)

VCOの項でも説明しましたが、ノイズジェネレータはノイズを発生させる回路です。
NGと表記されることもあります。

ノイズというのは文字通りのノイズ、雑音で、そのままでは「サー」とか「ザー」といった音楽的にはまったく意味を為さない音です。
ピッチやエンベロープ等を加工してシンバル等の打楽器の音色を作ったり、VCOと混ぜて管楽器などの息遣い(ブレスノイズ)のシミュレートに使ったりします。
またLFOの項で説明したランダム波形というのもこのノイズを利用した波形になります。
(ノイズジェネレーターとして独立した機能ではありませんが)

ノイズには「ホワイトノイズ」と「ピンクノイズ」の2種類があり、それぞれで音が異なります。
機種によってはどちらも選択できますが、どちらか一方で固定のものもあります。

機種によってはノイズジェネレーターは独立の回路ではなく、複数あるVCOのひとつと共用となっているものもあります。

ノイズを利用してサウンドエフェクトを作ることもできます。
最も有名なのは風の音で、ノイズにフィルターを掛けることで簡単に作ることができます。

■ノイズの例

ピンクノイズ2回、ホワイトノイズ2回、ノイズを利用した風の音、ノイズを利用したエフェクト
の順です。
最後の低音から高音に変化するエフェクトはダンス系ミュージックなどで多様されます。
これはカットオフフィルターのカットオフ周波数を徐々にあげていくことで実現します。
フィルタータイプはローパスかバンドパスがいいでしょう。

カットオフのコントロール方法はカットオフ&レゾナンスで音質変化を参考にして下さい。
ただしSynth1は初期設定ではコントロールチェンジが設定されていないので、自分で設定する必要があります。
Synth1でのコントロールチェンジの設定方法は次ページで説明します。

クロスモジュレーション(Cross Modulation)

VCOを2つ以上搭載している機種で、一方のVCOをもう一方VCOのモジュレーション用の回路として使用する機能です。
仕組みとしてはLFOとまったく同じですが、LFOの低い周波数ではなくVCOの高い周波数で変調することで、通常では合成できない倍音成分を作り出すことができます。

「Cross」の部分は「X」と表記されていることもあります。
(「X-mod」など)

ピッチが安定しにくいので音楽的な使用には向かず、打楽器音やSE的な音を作るのに向いています。

リングモジュレーター(Ring Modulator)

VCOとLFO、またはVCOを2つ以上搭載している機種で、2つのオシレーター同士を掛け合わせることで通常では合成できない倍音成分を作り出す機能です。
「RM」「R.mod」「ring」などと表記されます。
機能的にも発音される音もクロスモジュレーションに似ていますが、クロスモジュレーションよりも音程が安定していてメロディーの演奏も可能です。

クロスモジュレーションもリングモジュレーターも狙った音を作り出すことが難しい回路です。
音作りに積極的に活用しようとはせず、「こういう機能もある」程度に覚えておけばいいでしょう。

ポリ・モード、モノ・モード

ポリとはポリフォニック(Polyphonic)の意味で、同時に複数の音を発音できる方式をいいます。
モノとはモノフォニック(Monophonic)の意味で、同時にひとつの音しか発音できない方式をいいます。

ポリモード/モノモードの切り替えスイッチがある機種や、最大同時発音数を1に設定するとモノモードに、2以上に設定するとポリモードになる機種があります。

通常はポリモードで使えばいいですが、和音を必要としない単音のフレーズではモノモードの方が都合がいいことがあります。
例えばポリモードでは(最大同時発音数を越えない限り)ひとつの音のアタックからリリースまですべてが発音されますが、モノモードだと前の音が次の音に被った時、前の音は強制的にオフになります。
和音を発音できない管楽器や人の歌唱などはこれが普通なので、不要な音被りをなくすことでソロの演奏がより際立ちます。

ポルタメント(Portamento)

2つの音の音程を滑らかに繋ぐ機能で、「Portamento」「Glide」などと表記されている事が多いです。 MIDIメッセージのポルタメントと同様です。

ポルタメントのつまみを上げるほど音程変化がゆっくりになります。

PCM音源のポルタメントはサンプルのピッチを変化させているので音程が離れすぎると不自然になることがありますが、アナログシンセはVCOがリアルタイムに波形を作りだしているので非常に滑らかに繋ぐことができます。

前述のポリモードの状態だとポルタメントが掛からない機種が多いので、使う場合はモノモードにしてください。
また「レガートモード」が搭載されている機種でこれがオンの場合は、2つの音が重なって演奏された場合のみにポルタメントが掛かるようになります。

リトリガー(Retrigger)

エンベロープジェネレーターにある機能で、新しい音が演奏されると前の音のエンベロープを強制的に終了し、再度エンベロープをアタックから発音しなおします。
演奏ニュアンスが変わりますが、通常はオフでいいと思います。