モジュレーション用の回路
VCO、VCF、VCAの3つがアナログシンセの最も重要な回路で、これだけでも音作りが可能です。
しかしもっと音楽的な音作りをするためには時間的な変化が必要になります。
そのための回路が「LFO」「エンベロープジェネレータ」です。
ある音に対して何らかの変化を掛けることをモジュレーションと言い、モジュレーションを掛けるための回路をモジュレーターと言います。
使用する機種(プラグイン)によって搭載している回路や、接続の自由度は異なります。
それぞれの回路を自由に接続できるものから、特定の接続しかできないものなど色々あります。
LFO
「Low Frequency Oscillator」の略で、低い周波数を発生させるための装置です。
これは音をそのまま出力するのではなく、他の回路に入力して音に変化を掛けるために使用されます。
たとえばLFOの信号をVCOに入力することで、音程を周期的に変化させることが出来ます。
これによりビブラートの効果を出したり、サイレンのようなSEを作ることもできます。
LFOのパラメータには以下のようなものがあります。
- 波形
VCOの波形と同じ。
LFO特有の波形としてランダム波形がある。 -
周波数
VCOでいう音程と同じだが、音の高さではなく変調するスピードを調整する。
「frequency」「rate」「speed」などと表記されることが多い。 - デプス
LFOを掛ける強さを調整する。
「depth」「amount(amt)」などと表記されることが多い。 - テンポシンク
LFOの周波数を外部入力されたテンポと同期する。
ソフトシンセでは大抵「sync」というボタンがあり、オンにすることでDAWのテンポとLFO周波数のタイミングが合うようになる。
LFOもオシレータの一種なので、VCOと同じように正弦波や三角波などの波形の形状を選択する事ができ、それによりモジュレーションの掛かり方も変わります。
機種によっては複数あるVCOのひとつをLFOとして使用するようになっているものもあります。
またLFO特有の波形として「ランダム」というものがあります。
正しくは波形ではなくノイズとサンプル&ホールドという機能で実現されるものですが、要するに正弦波や三角波などの規則的な波形ではなくランダムな変化を起こす信号を得ることが出来る機能です。
ソフトシンセの場合、MIDIのコントロールチェンジ1番の「モジュレーション」でLFO周波数を操作できるようになっている物が多いです。
当然他の番号になっている物もありますし、自分で割り当てるタイプの物もあります。
※以下の説明は一般的なアナログシンセの場合です。
機種によっては制限があったり、もっと自由な設定が可能な場合もあります。
VCOに掛ける
音程が周期的に変化します。
- ビブラート
波形を正弦波または三角波にセットし、速めのスピードで薄く掛ける。 - サイレン
波形を矩形波にセットし、スピードは遅めでやや大きく掛ける。
- コンピュータ
波形をランダムにセットし、やや速めのスピードで掛ける。
VCFに掛ける
フィルターの開閉(カットオフ周波数)が周期的に変化します。
- ワウワウ
波形を正弦波または三角波にセットし、フィルタータイプをローパスに、レゾナンスをやや上げる。 - スウィープ
波形を正弦波または三角波にセットし、フィルタータイプをローパスに、レゾナンスをやや上げる。
スピードをかなり遅めに掛け、音色をパッド系にする。 - ウィンド
ノイズジェネレータでノイズを発生させ、VCOは出力をゼロにする。
LFO波形は正弦波または三角波にセット。
フィルタータイプは好みで、かなり遅めのスピードで掛けると風の音を再現できる。
レゾナンスをわずかに上げてもいい。
VCAに掛ける
音量が周期的に変化します。
- トレモロ効果
波形を正弦波または三角波にセットする。
スピードやレベルは好みで。
PWMに掛ける
PWM(パルス・ウィズ・モジュレーション)に掛ける事で、パルス波のデューティー比を周期的に変化させることが出来ます。
これによって厚みのある音が得られます。
PANに掛ける
-
パンに掛けることでオートパンの効果が得られます。
エンベロープジェネレータ
エンベロープとは音の時間的な変化のことで、それをシミュレートするための回路です。
EGやADSRとも呼ばれます。
- アタック(Attack)
音の立ち上がりから最大音量に達するまで部分 - ディケイ(Decay)
最大音量から持続音量までの部分 - サスティン(Sustain)
音が持続する部分 - リリース(Release)
持続部分から音が消えるまでの部分
鍵盤を離してから音が消えるまでの時間
これらの頭文字を取ってADSRとも呼ばれます。
機種によってはADRのみや、その他独自パラメータを備えたものもあります。
アタック、ディケイ、リリースはそれぞれ次の段階に達するまでの時間(横軸)を設定しますが、サスティンが持続する時間は鍵盤を押している間になるため、サスティンだけは時間ではなくレベルの設定(縦軸)になります。
VCOに掛ける
音程が時間変化します。
機種によっては、VCOにエンベロープジェネレータを掛けると音程のがサスティン値になる物もあります。
つまりサスティンの値がゼロ以外の場合、鍵盤上の音程と実際に発音される音程とがズレてしまいます。
この問題を回避するためには
- サスティンは常にゼロにしておき、アタックやディケイのみを調整する
- サスティンをゼロ以外にしたい場合はFineやCoarseで音程が丁度合うように調整する
などの方法があります。
1番目の方法はアタックからサスティンに掛けて音程が上から下へと変化する効果が得られます。
機種によってはエンベロープを反転する機能があるので、これをオンにすれば下から上へと変化する効果が得られます。
2番目の方法は単純にズレた分を微調整する方法です。
この場合、下からしゃくりあげるように音程が上がり、リリースで音程が下がるという独特の雰囲気の音になります。
VCFに掛ける
フィルターの開閉(カットオフ周波数)が時間変化します。
音の明るさが時間変化することになります。
多くの楽器は発音している間、単純に同じ音色が鳴り続けているわけではなく、時間変化とともに変化していきます。
それをEGでシミュレートします。
フィルタータイプをローパスに、レゾナンスをやや上げ、アタックとディケイをやや上げ、サスティンとリリースをゼロにすることでシンセ特有の「ミョーン」という音色を作ることが出来ます。
VCAに掛ける
エンベロープジェネレータが最もよく使われるのがVCAです。
多くの楽器は発音開始から発音終了まで音量が時間的に変化しており、それがその楽器らしい音色となっています。
いくつか例を示します。