MIDIとオーディオの違い

パソコン上では「MIDIファイル」と「オーディオファイル」は同じ「ファイル」として扱われます。
どちらも音楽プレイヤーで再生すれば音が鳴ります。
ではMIDIとオーディオの違いは何でしょうか。

MIDIとはすでに説明した通り「演奏の情報」「MIDI音源のための楽譜」です。
楽譜なので演奏情報を目で見ることが出来ます。
しかし楽譜ということは、私たちの耳に聞こえる「音」はMIDIファイルには入っていません。
楽譜は楽器で演奏して初めて音楽になります。
同じように、MIDIファイルは「MIDI音源」で再生しないと「音」として聞くことが出来ません。

「MIDI音源」と「DTM音源」は同じものと考えて問題ありません。

対してオーディオファイルとは「音そのもの」です。
誰かが演奏した音そのものを録音したものがオーディオファイルとなります。
CDに収録されているのもオーディオですし、MP3は圧縮された「オーディオファイル」の一種です。
パソコンに自分の歌声を録音すると、それも「オーディオファイル」形式で保存されます。

代表的なオーディオファイル形式には「WAV」、上に書いた「MP3」、Macで主に使われる「AIFF」などがあります。

■MIDIとオーディオの違い
MIDIとオーディオの違い

MIDIの特徴

MIDI音源の互換性

MIDIデータは「MIDI音源」で再生しないと「音」になりませんが、音源といっても各メーカーから様々な種類が発売されています。
「音源A」を使って作成されたMIDIデータを「音源B」で再生するとどうなるでしょうか。

MIDIという共通規格なので、音は鳴ります。
しかし、ピアノひとつとってみても「音源A」はきらびやかな音色が収録されていて「音源B」ではこもった感じの音色が収録されているかもしれません。
同じピアノという楽器でも、音源ごとに収録されている音色のニュアンスが違います。
つまりMIDIファイルを他人とやり取りする場合、相手が自分と同じ音源を持っているなら問題ありませんが、持っていなければ意図した通りの音で再生することが出来ないかもしれません。
(同じ音源でなければ全く同じ音色、演奏にはならないと思ったほうが良いです)

対してオーディオファイルはすでに説明したとおり「音そのもの」です。
どんな環境で再生しても、作者の意図した通りの音になります。
どのような装置でCDを再生しても(スピーカー等による音質の違いはあれど)同じ音がなりますよね。

この問題を解決するには、MIDI音源で演奏した音を録音し、オーディオファイルにしてしまうことです。
一度オーディオ化すれば、環境が変わっても同じ音を鳴らすことが出来ます。
最初のうちは曲を作るにしてもソフト上でデータを打ち込んで終わり、となることが多いと思いますが、慣れてくればMP3などのオーディオデータ化してネットで配布することもできます。

データのサイズ

MIDIファイルは演奏の情報だけなので、オーディオファイルに比べてファイルサイズが非常に小さいという特徴があります。
長編、大編成の楽曲であってもMIDIファイルにすれば数KB(キロバイト)程度のサイズしかなく、メールに添付するのも簡単です。

オーディオファイルは基本的に楽曲の長さがそのままファイルサイズになります。
5分程度のCD音質の曲ならば50MB(メガバイド)前後になります。
これをメールに添付するのはちょっとしんどいので、どうしてもメールに添付したい場合はMP3などのオーディオ圧縮形式に変換します。
圧縮方法にもよりますが、1/10程度にはサイズを小さくできます。

最近は大容量のネット回線も充実してきているので、無圧縮のオーディオ形式でデータをやり取りすることも現実的に可能です。

MIDIデータをオーディオデータ化しても、後から演奏の修正が必要になった場合は再度MIDIデータが必要になりますので、元のMIDIデータは削除しないようにしましょう。

音源の表現能力

MIDI音源は高価なものから数千円程度の安価なもの、また無料のソフト音源など様々あります。
高級機材は確かに音は良いです。
しかし打ち込みの技術がないとせっかくの機材も宝の持ち腐れになります。

DTMは、いかに高級音源を使用しても製作者の打ち込み技術によって出来が大きく左右されます。
高価な楽器でも演奏者が下手なら良い演奏にならないのと同じです。

MIDIを使えばピアノ、ギター、ドラムなど様々な楽器を自分ひとりで再現することが出来ます。
しかし裏を返せば、それらの楽器の特性や奏法をある程度理解しないとそれらしい演奏ニュアンスを再現することが出来ません。
このあたりに打ち込み技術の差が出てきます。

打ち込みの技術は努力次第で上達しますが、MIDI音源はそれに収録されている以外の音色は出せません。
トリッキーな打ち込み方でカバーしたり、DTM音源の出力を録音したものをさらにオーディオ加工したりと様々な音作りの方法はありますが、そもそも収録されていない音を作り出すことは限界があります。

また、楽器にはそれぞれ様々な奏法が存在します。
たくさんの楽器の音を収録したMIDI音源でも、各楽器の基本的な奏法しか収録されていないということがよくあります。
収録されていない奏法はMIDIデータをいじくってなんとか再現することになるのですが、完璧に再現することは難しく、奏法によってはまったく不可能だったりします。

打ち込みで再現が困難な楽器のニュアンスは、サンプリングCDやインターネット上にあるオーディオ素材などを利用することで補うことが可能ですが、自らの楽曲にあった素材が見つかるとは限りません。

最も良い解決策は、打ち込みにこだわらずに生演奏を録音してしまうことです。
DTMソフトの一種であるDAWはMIDIデータとオーディオデータの両方を同時に扱うことができ、それぞれを組み合わせてひとつの音楽に出来ます。
打ち込みの苦手な部分をオーディオによって補うことが出来ます。
打ち込みだけで完結するのではなく、オーディオの得意な分野も十分に活用し、それぞれを組み合わせて曲を作るのが最近のDTMの主流です。

プロみたいに演奏が上手でなくても、何度でも録音をやり直すことができます。
なんとか上手く演奏できた部分だけをつなぎ合わせて一本のテイクにすることもできます。
周りに楽器演奏ができる人がいるならお願いして録音しても良いです。

生演奏の録音が困難な場合は上で説明したオーディオ素材を漁るか、打ち込みで何とかするしかありません。
例えばギターの再現が困難ならば別の楽器に変えるなどの妥協も必要になります。

まとめ

  • MIDI音源同士はデータの互換性があるが、音源によって音色等のニュアンスが異なる
  • オーディオデータは「音そのもの」であり、再生環境で音色が変わることはない
    (スピーカーなどによって音質は変わる)
  • MIDIデータはファイルサイズが小さい
  • オーディオデータはファイルサイズが大きい
  • MIDI音源の演奏表現は製作者の打ち込み技術が大きく影響する
  • 打ち込みだけでは限界があるので、生演奏の録音ができるなら活用するべき