プログラムチェンジとコントロールチェンジ

前回の打ち込みで、音色の変更とパン(定位)の設定を行いました。
音色の変更はプログラムチェンジ(PC)で設定します。

ではパンは何で設定されるんでしょうか?

音色を変更する場合はプログラムチェンジという独立した信号が用意されていますが、そのほかの設定のほとんどはコントロールチェンジ(CC)という信号で行います。

プログラムチェンジの番号にそれぞれ楽器が割り振られているように、コントロールチェンジ番号にもそれぞれ機能が割り振られています。
先ほど「010 Panpot」の設定を変更しましたが、これはパンの設定である「コントロールチェンジ10番」の設定値を「30」に変更したわけです。
コントロールチェンジ10番の値を「127」にすればそのチャンネルの音は右のスピーカーから聞こえてきます。

そのほかで言えば、「コントロールチェンジ7番」はボリュームの設定です。
値を「0」にすれば無音になり、「127」にすれば音量は最大になります。

もう気づいたかもしれませんが、MIDIでは多くの設定を「0から127」の128段階で行います。
(プログラムチェンジは「1から128」の128種類です)
プログラムチェンジは「番号」のみで、値は持ちません。
コントロールチェンジは「番号」と「値」を持ちます。
コントロールチェンジ番号7番、値が64なら「ボリュームを64」に設定します。
0~127のうちの64ですから、音量をちょうど半分に設定するという意味です。

コントロールチェンジの番号も0から127までありますが、機能が割り当てられているのは半分くらいで、その中で使用することがあるのはせいぜい十数個程度です。

よく使うコントロールチェンジには以下のようなものがあります。
(「CC1」は「コントロールチェンジ1番」の略です)

  • CC1 :モジュレーション(音をビブラートさせる)
  • CC7 :ボリューム(チャンネルの音量設定)
  • CC10:パン(チャンネルの左右の定位)
  • CC11:エクスプレッション(演奏の抑揚)
  • CC64:ホールド(オンの間、音を持続させる)
  • CC91:リバーブセンド(リバーブエフェクトへの送り量)
  • CC93:コーラスセンド(コーラスエフェクトへの送り量)

CC7とCC11はどちらもボリュームに関する設定なのですが、CC7はチャンネル全体のボリュームの設定で、最初に設定してからは曲中であまり設定を変更しません。
CC11は演奏者が(自然に、あるいは意識的に)行う演奏の抑揚を再現するものでです。
バイオリンやブラスなど、音量変化が頻繁に行われる楽器で多様されます。

CC64は主にピアノで使われるコントロールで、ピアノペダルのひとつである「ホールドペダル」と同じ働きをします。
設定値が「63以下」の場合はオフ、「64以上」の場合はオンになります。
ホールドがオンの間は音符の長さに関係なく、音が伸ばしっぱなしになります。

CC91とCC93はエフェクトに関する設定です
リバーブとは残響効果のことで、トンネルやお風呂場などのように音に響きを加えることが出来ます。
コーラスは元の音にわずかにピッチ(音の高さ)をずらした音を重ねることによって、音に厚みを加えることが出来ます。
(しかしリバーブもコーラスもMSGSでは使用出来ません…)

今は「こんなものがある」くらいの感じで構いません。
詳しくはDTM中級者編で説明します。
MIDIのコントロール方法を覚えよう

拡張音色(バンクセレクト)

プログラムチェンジは「番号」しか設定するものがありませんから、これだけだと128種類までしか音色指定できません。
GM音源は「少なくとも」128種類の音色を持つことが定められていますが、これ以上の音色を収録している音源も数多くあります。
これらは「拡張音色」などと呼ばれます。

拡張音色の指定は、コントロールチェンジ0番、32番とプログラムチェンジをセットで使用します。
コントロールチェンジ0番と32番はバンクセレクトと言います。
(コントロールチェンジ0番と32番についてはいずれ説明します)

音符情報について

いままでの説明の中でずっと「音符」と表記してきましたが、MIDIでは音符情報のことをノートといいます。
ピアノの鍵盤に例えますと、鍵盤を押すとノートオンメッセージが、鍵盤を放すとノートオフメッセージが送信されます。

さらっと登場しましたが、MIDI信号のことをメッセージまたはMIDIメッセージといいます。
コントロールチェンジもノートオンもメッセージです。

ノートが持っている情報は「音の高さ」「音の長さ」「ベロシティ」の3つです。
(「発音タイミング」の情報も持っていますが、これは他のメッセージでも同様です)

ノートとは要するに五線譜上の音符のことです。
「音の高さ」は五線譜上の上下の位置、「音の長さ」は音符の形(四分音符とか八分音符とか)のことです。

ベロシティはドラムの打ち込みのページで説明した通り、楽器を弾く強さを表します。
これは五線譜上では音符ごとに指示されることのない情報です。
(五線譜上では、特に強弱を明確に指定する音符には「mp(メゾピアノ)」や「ff(フォルテッシモ)」などの記号で指示します)
人が楽器演奏するとき、それぞれの場面に合わせて(意識的に、または無意識的に)強く弾いたり弱く弾いたりしています。
この強弱が演奏のノリや人間らしさになっていて、演奏が上手い人ほど巧みに演奏に強弱をつけます。
ペロシティはこれを再現するために使用します。

逆に、人間には打ち込みデータのように「すべてを同じ強さで弾く」なんてことは出来ません。
わざと機械的なニュアンスを出したい場合はベロシティを一定にすることもあります。

まとめ

  • 音色の指定はプログラムチェンジ(PC)で行う
  • 音源の設定や演奏のニュアンス再現などはコントロールチェンジ(CC)で行う
  • MIDIでは音符情報のことをノートという
  • 音の鳴り始めをノートオン、鳴り終わりをノートオフという
  • PCはデータとして番号のみを持つ
  • CCはデータとして番号とその値を持つ
  • ノートはデータとして「長さ(ゲート)」「高さ(ピッチ)」「強さ(ベロシティ)」を持つ
  • 全てのMIDIメッセージは上記に加えて位置情報を持つ
    (何小節目の何拍目にデータがあるかという情報)