残りのパートを打ち込んでいく

イントロが終わったらAメロ、Bメロと耳コピして打ち込んでいきましょう。
聞こえにくいパートは何度も聞き込み、イコライザー等も駆使して少しずつ完成させていきましょう。
作業的には今までとほとんど同じ事の繰り返しなので、要点のみ説明します。

全部のパートを打ち込んでいくと16チャンネルを越えます。
Proteus VXを使用している場合は2台目を立ち上げましょう。

一応打ち込み図も載せておきますが、練習のために出来るだけがんばって耳コピしましょう。
ドラムとベースは比較的簡単なので図は省略しています。
わからなければ耳コピの題材を決めるにあるMIDIデータを参考にして下さい。

※小さい画像はクリックで拡大します。

Aメロ

イントロ後、ドラム、ベース、アコギ以外の楽器はいったん休憩し、代わりにメロディ楽器が入ってきます。
Aメロのメロディ

メロディは「クラリネット」という木管楽器を使用しています。
似たメロディが2回繰り返されますが、後半は「バンドネオン」というアコーディオンのような鍵盤楽器が追加され、同じメロディを演奏します。

同じく、2回目の繰り返しからリズム楽器に「コンガ」が追加されます。
これは手でたたく太鼓で、ラテン系の音楽で良く使われる民族楽器です。
大きさの異なるコンガを2つ並べて演奏することが多いです。
コンガ

コンガは2小節の同じパターンの繰り返しです。
Proteus VXに収録されているコンガはGM音源に比べて収録音が多く、演奏の幅が広がる半面、ピアノロール画面を見ても一体どういう演奏なのかがわかりません。
実際に音を出してみてどの音程にどんな音が収録されているか確認しましょう。

アコギパート
Aメロのアコギ

Aメロ繰り返しからマリンバがうっすら入っているようにも聞こえるのですが、良く分からないのでカット。

クラリネットは004:034「Clarinet」
コンガは007:014「Congas1」
バンドネオンは000:115「Vox 1」
バンドネオンはProteus VXには収録されていないのでオルガン系の音色を代替使用しています。

Bメロ

Bメロはアコギが休憩し、イントロにあったエレピとストリングスが追加されます。
メロディ楽器のクラリネットが終了、代わりに「バンジョー」「マンドリン」が追加されます。
バンドネオンは引き続きメインメロディを演奏します。
Bメロのメロディ

バンジョーもマンドリンもギターと同じく弦楽器ですが、音色や演奏方法が異なります。
バンドネオン、バンジョー、マンドリンはすべて同じメロディを演奏しますが、バンジョーは2本作って左右に広げ、マンドリンは真ん中やや左よりに配置しています。

マンドリンは「トレモロ奏法」というマンドリンで良く使われる奏法でメロディを演奏しています。
ギターもマンドリンも弦をはじいて音を出すのですが、その都合上あまり長い音が出せません。
マンドリンはギターよりもそれが顕著なので、音を持続させるために同じ音程の音を連続して弾く奏法が用いられます。
Bメロのメロディ

打ち込みの際にはベロシティに若干の変化を付けたほうがいいでしょう。
例では強・弱を繰り返しています。
音量変化をさせたい場合はベロシティで調整してもいいですし、エクスプレッションを使っても構いません。
(音源によってはベロシティかエクスプレッションかによってニュアンスが変わります)

繰り返し部分からはイントロで出てきたベル系の楽器がメロディに追加されます。
(メロディラインはバンジョー、マンドリンと同じです)

ストリングスパート
Bメロのストリングス

エレピパート
Bメロのエレピ

バンジョー(左)は003:049「Steel Real」
バンジョー(右)は000:032「NyloSteel」
マンドリンは003:037「Nylon」
バンジョーもマンドリンもProteus VXには収録されていないのでギター系の音色を代替使用しています。

サビ

サビ部分はアコギ、マリンバが復活し、メロディ楽器がまた変わります。
Aメロのアコギ

メロディ楽器はストリングスですが、イントロとBメロで使用したストリングスとはまた別にメロディ用のストリングスを用意しています。
さらに「トランペット」で同じメロディを、「コルネット」で1オクターブ下の同じメロディを演奏しています。
コルネットはトランペットと同じ金管楽器ですが、音色が異なりトランペットよりも柔らかい音色になります。

Bメロに引き続きベル系の演奏がありますが、今度はメインのメロディラインとは別のメロディを演奏しています。
下図にはありませんが、チェレスタのみ3オクターブ下の音程で同じメロディを演奏しています。
サビのベル

これはメインメロディを引き立てるために演奏され、こういったメロディを「裏メロディ」や「オブリガート」と言います。
エレピやストリングス(サビのメインメロディのストリングスは除く)なども広義には裏メロを演奏しているとも言えます。

Proteus VXでこの曲を打ち込む場合、音源の制限としてベルのパートで音程の最高音が足りません。
そのためピッチベンドを用いて擬似的に再現しています。
ピッチベンドで最高音以上の音を出す

上図の54小節目は本来は「↑レ↓レ↑レ」と1オクターブ上下するのですが、ピアノロール上は「↑ド↓レ↑ド」になっています。
これはProteus VXではC8(シーケンサーによってはC7)のドが最高音で、それよりも上にノートを配置しても音が鳴らないためです。

これを何とかするために、ピッチベンドで「ド」を全音あげて「レ」にしています。
ピッチベンドは数値を16384段階で調整し、プラス方向は「0~8191」、マイナス方向へは「-1~-8192」となっています。
なので8192を12で割った「682」が半音ひとつ分の音程ということになります。
なのでこれを倍にすれば全音ひとつ分なのですが、実際にはズレがあるので補正として1をプラスします。
(半音ひとつ分を「683」にしても構いません)

Proteus VXはピッチベンドレンジ(ピッチベンドメッセージで上下する音程の幅)が統一されておらず、8192で全音ひとつ分になる音色もあります。
この曲で使用した音色ではグロッケンがピッチベンドレンジ「2(8192で全音)」で、チェレスタが「12(8192で1オクターブ)」でした。
そのため、メロディラインは同じですがピッチベンドメッセージのみが異なります。

これは音源に制限があるため仕方なしに行った方法です。
ピッチベンドは元音程よりもあまりに上下しすぎると音色が大きく変化するので、あまり使える技ではありません。
あえてその音色変化を狙った音作りをすることもありますが。

Proteus VXは、ノートオンメッセージと同時にピッチベンドメッセージを送信しても上手くいかないようです。
ノートオンメッセージよりもわずかに早くピッチベンドメッセージを送ってやるときちんと音程が変わります。
上図を良く見るとピッチベンドのほうがわずかに早いのがわかると思います。

アコギパート
サビのアコギ

エレピパート
サビのエレピ

ストリングスパート
ストリングスの低音パートは休憩です。
原曲は演奏しているかもしれませんが管理人には聞こえません。
サビのストリングス

マリンバパート
マリンバはほとんど聞こえないので多分にアレンジが入っています。
サビのマリンバ

トランペットは004:001「Soft Trumpet」
コルネットは000:021「BreathyTBone」
ストリングスは003:084「Section」
コルネットは代替としてトロンボーンを使用しています。

間奏

間奏はメインと言えるメロディ楽器はなくなり、ストリングスとアコギ、エレピがそれぞれメロディを奏でます。
音数が少ないので耳コピは比較的楽だと思います。

アコギパート
間奏のアコギ

エレピパート
間奏のエレピ

ストリングスパート
間奏のストリングス

以降はAメロから繰り返しなので、以上で耳コピは終了となります。


残りのパートの説明を1ページに詰め込んだので量が多くなりましたが、聞こえた通りにデータを並べるという作業はどれも同じです。

今回の曲は比較的簡単で、音さえ採れれば演奏の再現という点では特に難しいところはありません。
他の曲を耳コピする場合、音は聞き分けられてもMIDIで再現出来ない事は度々あると思います。
その場合はその楽器の打ち込みテクニックを研究するとか、質の良い音源の導入を検討してもいいと思います。

最近は打ち込みで作られた楽曲が増えたとはいっても、やはり生演奏で作られた曲も多いです。
プロの演奏や特殊な機材を使う物はMIDIデータをいじくるだけではどうやっても再現不可能な音も割とあります。
(そういった音は打ち込みを続けていると大体判別出来るようになります)
そのような場合はオーディオ素材を波形編集したりエフェクトを掛けたりしての再現が必要になってきます。