実際にミックスしてみよう
このページでは簡単な楽曲の打ち込みで打ち込みした「かえるの歌」をミキシングしてみます。
…とはいっても、この曲はメロディ、ドラム、ベースしか打ち込んでいないのでミキシングではほとんどやることはありません。
フェーダーで各トラックの音量調節をすればほとんど終わりといっていいでしょう。
それでは面白味がないので、少しエフェクターを使用してみます。
まず、TTS-1とSI-DrumKitのリバーブ(REVERB)を切っておきます。
リバーブというのは音に残響を加えるエフェクトです。
風呂場やトンネル内で大声を出すと音が響くアレです。
リバーブは音源(ソフトシンセ)側に搭載されていることが割と多いエフェクトなのですが、異なる音源同士を同時に使用する場合は異なる残響音が付加されることになり、音響的に不自然になる場合があります。
(音源Aではコンサートホールの響きなのに、音源Bでは録音スタジオの響きになっている、など)
なので、共通のリバーブエフェクトを使用して響きを統一し、一体感のある演奏にします。
Sendの項目で説明した手順通りに、TTS-1のトラックのSendから新規ステレオバスを作成します。
(すでにある場合は何もしなくて良い)
プロジェクトの作成方法によっては、最初から「Master」「Metronome」「Preview」という三つのバストラックが存在する場合があります。
作成されたバストラックにリバーブエフェクトをインサートします。
FXの項目で説明した手順と同じく、「オーディオFXの挿入」→「Reverb」→「Sonitus Reverb」を選択します。
「FX」左側の電源ボタンをオンにするのを忘れないように。
「Sonitus Reverb」は設定項目がたくさんあって難しそうに見えますが、今回設定を変更するのは赤枠で囲った二か所だけです。
「Dry」の「Mute」ボタンをオンにします。
Dryというのはこのエフェクターに入力された原音のことです。
原音はSend元のトラックから出力するのでリバーブ側では不要です。
(Dry設定はオーディオトラックに直接インサートする場合に使用します)
「Reverb」の右側のツマミは残響音のボリュームです。
今回はDryを使用しないため、エフェクターの音量が小さくなるのでここで出力を上げています。
ただしこの音量を上げるとすぐ上のE.R.(アーリーリフレクション、初期反射音)とのバランスが変わるので、こちらも必要に応じて調整しても良いです。
後いじるとすれば「Room Size」で部屋の広さをシミュレートできます。
「Decay Time」で残響音の長さを調整できます。
右上の「Presets」内にいろいろなプリセットがあるので適当にいじってみてもいいでしょう。
次にドラムトラックからもリバーブに音を送ります。
「Level」ツマミでリバーブへのセンドレベル(送り量)が変わりますので、それぞれいい感じになるように調整してください。
ベースにはリバーブを掛ける必要はありません。
掛けるとしても、ごく薄く掛ける程度が良いでしょう。
マスタートラックの表示
各トラックの音は最終的にマスタートラックに送られ、そこからハードウェア(オーディオインターフェイス等)に音が出力されます。
コンソールにマスタートラックを表示してみましょう。
コンソールパネルメニューの「ストリップ」→「ハードウェア出力」をクリックします。
マスタートラックのフェーダーは基本的に「0dB」で固定してください。
フェーダーをダブルクリックすると既定値である0dBに戻ります。
マスタートラックはステレオトラックの左右で別々のフェーダーが割り当てられており、独立して動きます。
左右のフェーダーの動きをリンクさせたい場合は画像の鍵アイコンをオンにします。
Cakewalkのマスタートラックはフェーダー(音量の上下)とミュートしか機能がありません。
他のDAWではマスタートラックにエフェクターをインサートでき、ここで最終的な音の調整が可能なものがあります。
今回もマスタートラックで少し調整をしたいので、バストラックで同じ機能を実現します。
バストラックに音をまとめる
プロジェクトの作成方法によっては、最初から「Master」「Metronome」「Preview」という三つのバストラックが存在する場合があります。
その場合は「Master」を以下で説明する「マスターバス」として使用しても構いません。
バストラックはSendから音を送ってエフェクターを使用するのが(ミキシングにおいては)主な使用方法です。
それ以外にも、各トラックの出力先を直接バスに指定することで複数のトラックの音をひとつにまとめることができます。
まずコンソールパネルメニューの「バス」から「ステレオバスの挿入」を選択します。
リバーブ用のバストラックの隣に新規バスが追加されます。
(表示されていない場合はバスパネルの表示幅を広げてください)
ついでに、バスが複数になったので名前を変更しておきます。
「Bus A」は「リバーブ」に、「Bus B」マスタートラックの代わりに使用するので「マスターバス」という名前にしています。
次に、各オーディオトラックの出力先を変更します。
トラックの下部に「O XXX」というボタンがあります。
(「XXX」の部分は環境によって異なります)
「O」はOutputのOで、その上の「I」はInputのIです。
これをクリックするとそのトラックの出力先を変更することができます。
標準ではハードウェア(オーディオインターフェイス)が選択されていますが、これを先ほど作成(&名前変更)した「マスターバス」に変更します。
これで、このトラックの音はバスに送られるようになります。
TTS-1、SI-DrumKit、SI-GuitarBassと、「リバーブ」バストラックのすべてのトラックの出力を「マスターバス」に送るように変更します。
これですべての音の出力が「マスターバス」に送られるようになり、マスタートラックの代替として使用できます。
今後トラックを追加した場合も出力先を「マスターバス」に変更するようにします。
マスターバストラックで音質調整
「マスターバス」にすべての音をまとめてしまったので、このトラックで楽曲全体の音質調整を行うことができます。
(簡易的なマスタリング)
「マスターバス」トラックのFXに「Sonitus Multiband」をインサートします。
(「オーディオFX」→「Dynamics」→「Sonitus Multiband」)
これはマルチバンドコンプレッサーというもので、帯域ごとに個別にコンプを掛けることができるプラグインです。
今回は調整が必要なほどの楽曲ではないので設定は変更しなくても良いですが、適当にいじってみてください。
重要なのは赤枠で囲っている「Limit」と「Out」です。
Limitをオンにするとリミッターが有効となり、0dB(最大音量)を超える音量は出力しなくなります。
0dBを超えた音はノイズとなる可能性があるので、特にマスタートラックでは0dBを超えないようにする必要があります。
今回は「Sonitus Multiband」をリミッターとして使用します。
0dBを超えてはなりませんが、音量(音圧)はできるだけ大きい方が良いので「Out」で出力を上げます。
「Sonitus Multiband」画面右端の出力音が軽くクリップする(右上のランプが付く)程度まで上げてみましょう。
どれだけOutを上げても「マスターバス」フェーダーからの出力音は0dBを超えないことが確認できると思います。
(フェーダーの位置は0dBにしてください。赤枠の箇所をクリックで表示をクリアできます)
もちろんあまりに大きくし過ぎると音割れが発生するのでほどほどにしてください。
ちなみに「Out」の入力欄はマウスで上下にドラッグすることで数値を変更することもできます。
マスターバストラックのオートメーション
仕上げに、曲の最後をフェードアウトして終わらせましょう。
フェードアウトにはオートメーション機能を使用します。
オートメーションというのは「記録した通りにフェーダーやツマミ類を動かす」機能です。
オートメーション情報を記録するには「曲を再生しながらリアルタイムにフェーダー等を動かし、それを記録する」方法と、「Cakewalk上にオートメーション情報を書く」方法の二種類があります。
今回は後者を使用します。
まず、トラックビューの以下のボタンをクリックしてトラックにバスを表示しておきます。
縦幅が狭い場合は広げておきましょう。
以下の画像を参考に、「マスターバス」トラックの左下にあるアイコンをクリックします。
するとオートメーションレーンが表示されます。
オートメーションレーンの右側にある緑色の横棒が「マスターバス」トラックのフェーダーの位置(Outputのボリューム)を表します。
ここにフェーダー情報を書き込んでいくことによって、再生時にこの情報通りにフェーダーが自動で動きます。
オートメーションはフェーダー以外にもあらゆるものを操作することができます。
レーン左下の「+」ボタンでオートメーションレーンを追加できますし、すぐ右隣のボタンからオートメーションとなる対象を選択できます。
説明が長くなりましたが、実際にマスターバスのオートメーション操作をしてみましょう。
今回は曲の最後をフェードアウトさせます。
フェードアウトは、まずフェードアウトの「開始位置」と「終了位置」を決めます。
そして、その間を少し上に膨らませる形にすると綺麗にフェードアウトできます。
別にこれに従わなければならないわけではないので、実際に再生しながらいろいろといじってみてください。
オートメーションのリードとライト
オートメーションを一時的に無効にしたい場合はトラックの「R」ボタンをオフにします。
リアルタイムにフェーダー等を操作してオートメーションを記録する場合は「W」ボタンをオンにします。
これらはトラック全体の設定と、個別の(オートメーションレーン毎の)設定があります。
トラック全体のオートメーションで「W」ボタンをオンにするとすべてのオートメーションが書き込み対象になってしまうため、以前にオートメーションを設定していた場合は上書きされてしまいます。
なので、記録したいオートメーションのレーンを作成して、そこで「W」ボタンをオンにすることをおすすめします。
エクスポート
ミキシング作業が終わったら、オーディオファイルとして出力します。
MIDIクリップなどを何も選択していない状態にして、上部メニューの「ファイル」→「エクスポート」→「オーディオ」を選択します。
すると以下のウィンドウが開きます。
「ファイル名」は出力するファイル名です。
「ファイルの種類」はオーディオのフォーマットの選択です。
設定で変更するのは、画面下段中央の「サンプルレート」「ビット数」です。
サンプルレートは「44100」を指定します。
ビット数は「16」を選択します。
これらは音質に関わる設定で、上記設定はCD音源と同等の音質となります。
これらの設定の意味が分からない場合は必ず上記設定にしてください。
後はそのままで構いません。
「エクスポート」ボタンをクリックすればオーディオファイルが出力されます。
使用しているプラグインによっては出力された音がおかしくなることがあります。
その場合は画面下段右側にある「高速でバウンス」のチェックを外すと上手くいく場合があります。
「高速でバウンス」はCPUパワーをフルに使って高速に出力します。
これをオフにすると、Cakewalk上で再生している音をリアルタイムに音を録音します。
なので、Cakewalk上で正常に再生されているのならば出力もおおむね成功します。
ただし楽曲の長さと同じ分だけ出力に時間が掛かります。
これでミキシング作業の説明は終わりです。
後はいろいろなエフェクターの使い方を覚えればCakewalkでのミキシング作業は十分できるようになるでしょう。
実際にミキシングしたサンプル音源は以下です。