ミキシングの基本操作
作曲もミキシングも、決まった手順はありません。
最終的に良い出来あがりになれば順序などはどうでもいいものです。
ですがセオリーというものはあります。
ミキシングの場合は、やはり土台となるドラムとベースからになるでしょう。
これらは曲のリズムと雰囲気を大きく左右します。
Reaperを適当にいじくっていれば自然にわかるかもしれませんが、ミキサーの基本的な操作を下に示しておきます。
ボリュームやパンの調整ツマミのように、上下または左右に直線状に移動するツマミのことをフェーダーといいます。
ちなみに、ミキサーやトランスポートパネル(再生やリピートなどを操作するパネル)は右クリックメニューの「ミキサー(トランスポート)をメインウィンドウに格納する」のチェックを外すことで、画面から分離して表示する事が可能です。
※注意
ここではミックスの一例を示しているだけで、これが正解というわけではありません。
いろいろ試行錯誤してみましょう。
エフェクターについて
ミキシングの基本は音量と左右の定位の調節です。
それだけでは不十分なので、音質を調整するため、あるいはフェーダーだけでは調整できないような音量調節のために様々なエフェクターを使用します。
Reaper付属のプラグインの説明とおすすめフリーVSTエフェクト紹介を参考にして、イコライザー(EQ)、コンプレッサー、リバーブ、ディレイの役割くらいは簡単に理解しておいてください。
ドラムのミキシング
オーディオ化の際にドラムをステレオトラックとしてひとつにまとめてしまった場合は、全体の音量・音質調整しかできません。
今回のような簡単な曲ならそれでも構いませんが、ここではバラしてオーディオ化した場合の説明をします。
まずドラム以外のトラックはすべてミュートして、ドラムのみにしてください。
ドラムはフォルダトラックでまとめてしまったほうが便利です。
ドラムはバスドラム、スネアドラム、ハイハット(またはライドシンバル)基本のリズムパターンを作ります。
ドラムキットをセッティングするとスネアドラムは向かって右側に配置されますが、パンは真ん中でいいでしょう。
ハイハットはやや右に振ります。
今回の曲では使用していませんが、ライドシンバルはハイハットの逆側に振ります。
クラッシュシンバルは真ん中でも右寄り左寄りでも、好きなところに配置して構いません。
クラッシュシンバルが2枚以上ある曲の場合は左右に振ったほうがいいです。
MIDI音源に収録されているドラムキットは特に音質調整しなくてもよく聞こえるように、すでに調整されているものがほとんどです。
気になるところがなければ今は音質調整はしなくても構いませんが、せっかくなのでちょっとエフェクターを使ってみましょう。
スネアトラックの「FX」ボタンを押して「VST」→「VST:ReaFir」を選択します。
Reaper付属のプラグインの説明を参考にしていろいろといじってみてください。
イコライザーやその他のエフェクターで、後からある程度音色を変化させることが可能です。
しかし大幅な音色変更はどうしても加工した感じの音になります。
特に生楽器系の音色は録音の段階で、打ち込みなら音源(音色)選択の段階でできる限り好みの音色になるようにしましょう。
ベースとコード楽器の追加
ドラムがある程度出来たらベースを追加します。
大抵あとで再調整しますので、今の段階でドラムを完璧に仕上げなくても構いません。
ベースはバスドラムと音域が被るので、イコライザーで低音が出すぎないように調整しましょう。
ドラムとベースで曲の土台ができあがります。
後は好きな順番で楽器を追加していき、バランスを取っていきましょう。
リバーブを加える
ドラム、ベースまでは特に気にならなかったかもしれませんが、その他の楽器を加えていくと音の距離感がすべて一定に感じられます。
距離感を調整するためにリバーブを掛けてみましょう。
リバーブなどの空間系エフェクトは、各トラックにインサートするのではなくてリバーブ専用のトラックを作ります。
各トラックからは音を分離させてリバーブトラックに音を送ります。
このような方法をセンド、バス、AUXなどと言います。
新規トラックを作り、トラック名を「Reverb」に変更し、一番下にでも移動させておきます。
「fx」ボタンからリバーブを立ち上げます。
Reaper付属の「ReaVerb」でもいいのですが、使い方がややこしいリバーブなので今回はおすすめフリーVSTエフェクト紹介で紹介した「Glace Verb」を使用します。
わかるならReaVerbでも構いません。
立ちあげたらGlace Verbの「DRY」を最低値(左側)に、「WET」を最高値(右側)に設定します。
DRYは原音の音量、WETはリバーブの音量です。
リバーブ専用のトラックを作ってそこに音を送る場合、DRY値が上がっているとリバーブトラックに原音が混ざるため、送信元トラックの音と重なってしまいます。
リバーブトラックはリバーブの音だけが欲しいので、DRYは最低にしておきます。
WETは最高値で構いませんが、「0dB」などの基準が書かれているエフェクターの場合は0dBにしてください。
それ以上にすると音割れが発生する可能性があります。
リバーブトラックに音を送るためには、リバーブを掛けたいトラックの「I/O」ボタンをクリックします。
「I/O」とは「インプット/アウトプット」の略です。
とりあえずMelodyトラックにリバーブを掛けてみましょう。
「Sends」欄から「Reverb」トラックのチェックボックスをオンにします。
(Send=送る)
チェックを入れるとすぐ下に「Pre-FX」「Post-Fx」「Post-Fader(Post-Pan)」のラジオボタンと2つのフェーダーなどが表示されます。
「Pre」は「前」を意味する英語の接頭語です。
「Post」は「後」を意味します。
「FX」はエフェクターです。
Pre-FXとは、そのトラックにインサートされているエフェクターよりも「前」の音をリバーブトラックに送る、という意味になります。
つまり、Melodyトラックにエフェクターを掛けてどれだけ音を変化させていようとも、リバーブトラックに送られる音はエフェクターの掛かっていない音になります。
Post-Fxはその逆で、トラックに掛けられているエフェクターを通った後の音がリバーブトラックに送られます。
Post-Fader(Post-Pan)はさらにフェーダーとパンの設定を通った後の音がリバーブトラックに送られます。
つまりMelodyトラックの音量フェーダーの位置によってリバーブに送られる音の量が変化します。
音量フェーダーを絞り切るとリバーブには音が送られなくなります。
通常は「Post-Fader(Post-Pan)」のままリバーブに送ってください。
多くのミキサー卓やDAWでは「プリフェーダー」と「ポストフェーダー」の2種類になっていますが、Reaperではインサートエフェクトの前後どちらから分離するかを選ぶことが出来るようになっています。
図にするとこのようになります。
トラック名の左側にあるミュートボタン(駐車禁止みたいなやつ)をクリックすると一時的にセンドをオフにすることができます。
大きい方のフェーダーがリバーブトラックに送る音量で、右にするほどリバーブが深く掛かります。
これをリバーブのセンドレベル(送り量)と言います。
小さい方のフェーダーはステレオ送りの場合の左右の定位です。
「Channel 1/2 ===> Channel 1/2」はステレオ送りにするかモノラル送りにするかの設定です。
通常は変更しなくて構いません。
ちなみにReverbトラックのほうの「I/O」を開くと、各トラックので設定した通りの状態が「Receives」欄に表示されます。
(Receive=受け取る)
こちらの方から調整する事も可能です。
このようにして各トラックからのリバーブへのセンドレベルを調整していきます。
ディレイなども同様の方法で掛けます。
リバーブトラック自体のフェーダーは基本的に0dBのまま動かしません。
ここでリバーブの音量を調整してしまうとリバーブの量がいつまでたっても決まらないという事態になる可能性があります。
Glace Verbのその他の設定は今は特に変えなくても構いません。
すべての楽器をミックスする
残りの楽器の配置や音量バランスなどを考えて、どんどん追加していきましょう。
リバーブも自分が思うように掛けていってかまいません。
今はMIDIの打ち込み→オーディオ化→ミキシングの手順の練習なので、そこまでこだわってミックスする必要はありません。
ミックス作業はたいへん奥の深いものですので、そう簡単にマスターできません。
プロでも悩む事もありますし、何より正解といえるものがありません。
行き当たりばったりでいい結果になることもありますが、基本的には曲の出来上がりをイメージし、出来るだけそれに近づけていくようにしましょう。
エフェクターの使い方など学ぶことはたくさんありますが、それらはコツコツと勉強していきましょう。
リバーブは基本的に遠くしたい楽器ほど深く掛けますが、初めてミキシングをすると掛けすぎてしまうことがよくあります。
曲のジャンルや好みにもよりますが、あまりガンガンに掛けるのは避けた方がいいと思います。
バスドラムやベースなどは、特別な効果を狙う場合以外はリバーブを掛けないほうが音がすっきりとします。
トラックにエフェクトを掛けると0dBをオーバーしてしまう事があります。
複数の楽器をミックスしていくとマスタートラックでもレベルオーバーしてしまう事があります。
大抵のDAWは0dBを越えてもすぐに音に影響が出ないようになっていますが、出来ればオーバーしないほうがいいです。