ミキシングの微調整とオーディオ書き出しの設定
全部の楽器を混ぜ終わった後、全体のバランスを見直してみましょう。
ドラムやベースは大きすぎないか?リバーブは掛かりすぎではないか?
など、以外に「やりすぎ、掛けすぎ」は多いものです。
バランスはいろんな音楽を聴いて参考にするといいでしょう。
今回は誰かに聞かせるわけではない練習ですから、完全に自分の好みにしてしまってかまいません。
ミックスはずっと作業を続けているとどれが正解か分からなくなってくることが良くあります。
そういう場合は休憩して気分転換したり次の日にミックスし直すようにしましょう。
今回エフェクターはイコライザーとリバーブしか使用ませんでしたが、他にもたくさん存在します。
たとえばPadトラックはそのままでは左右の広がりがありませんので、コーラス等で広げてもいいでしょう。
エフェクターの種類すべてを把握し使いこなすことまでは必要ありませんが、イコライザー、コンプレッサー、リバーブ、ディレイくらいは使えるようになった方がいいと思います。
マスタートラックでの調整
すべてのトラックは最終的にマスタートラックに送られるわけですが、ここでさらに音を調整する事が可能です。
すべての音が混ざった状態ですので出来ることは限られますが、逆に全体に対して調整できるという利点でもあります。
CDにして頒布したりネット上で公開する場合、ミキシング作業の後にマスタリングという作業が行われます。
マスタリングとは最終的な「マスター音源」を作るための作業で、ミキシングで出来上がった2ミックス音源に対して音質や音圧の調整をして最終的な完成品を作ります。
CDにする場合は収録曲ごとの音量・音質のバランスや曲間の秒数などを決める作業も含みます。
今回は簡易的なマスタリングとして、マスタートラックにリミッターを掛けて少し音圧を出してみましょう。
マスタートラックの「fx」ボタンを押して「George Yohng's W1 Limiter」をインサートします。
このプラグインについてはおすすめフリーVSTエフェクト紹介を参照してください。
「George Yohng's W1 Limiter」はいくつか設定するツマミがありますが、基本的に「Threshold」をマイナス方向にスライドさせるだけで構いません。
これだけで音圧を稼ぐことができます。
近年の音楽は音圧がとにかく大きい曲が多く(ジャンルによりますが)、音圧が小さいと「音が小さい」とか「ショボイ」と否定的に捉えられてしまう事があります。
音圧を上げるテクニックはいろいろあるのですが、とりあえずはマスタートラックでリミッターを掛けるだけでもかなり音圧は稼げます。
ただしリミッターひとつだけでは限界がありますし、やりすぎは音質に悪影響なのでほどほどにしておきましょう。
音質に関してはマスタートラックでは微調整程度に留めたほうがいいでしょう。
フェードイン/フェードアウトの設定
ミキシング、マスタリングが終わったら曲の始めにフェードイン処理を、曲の終わりにフェードアウト処理を掛けます。
音楽にはスパッと終わるタイプと、だんだんと音量が小さくなっていって終わるタイプの2種類があります。
今回の曲はスパッと終わるタイプですが、この場合でも最後にフェードアウト処理をしたほうが無難です。
全部をソフトシンセの打ち込みで作った場合はあまり問題にはなりませんが、マイクなどから録音した場合はサーっという小さなノイズが録音されてしまうので、フェードアウトしないと突然ノイズが消えてしまい不自然になります。
フェードアウトはオートメーション機能を使います。
Reaperでは「表示」メニュー→「マスタートラック」でトラック上にマスタートラックを表示する事が出来ます。
トラックペインの何もないところを右クリック→「マスタートラックを表示」でも構いません。
すると一番上にマスタートラックが表示されます。
標準で表示されている線はテンポ情報です。
リタルダンドなど、滑らかにテンポを変更したい場合はこのテンポ情報の線をいじることで設定可能です。
今回はボリューム情報をオートメーションしたいので、ボリューム情報を表示させます。
「I/O」ボタンと「fx」ボタンの間にある「Choose Envelopes」ボタンをクリックします。
(折れ線グラフのアイコン)
表示されたウィンドウから「Tempo map」のチェックを外し、代わりに「Volume」のチェックをオンにします。
これでボリュームのオートメーションが有効になり、マスタートラックにボリューム情報が表示されます。
またテンポのオートメーションは無効になります。
無効にしたくないけど表示が邪魔な場合は「Visible」のチェックを外して下さい。
このウィンドウを見ればわかると思いますが、トラックのパンやインサートしているプラグインもここでオートメーションを設定する事ができます。
まずフェードインから設定します。
見やすいように表示を拡大してください。
この曲はベースの音が一番最初に鳴りますので、この時点で最大ボリューム(0dB)になっている必要があります。
再生バーをベースの頭に合わせて、この位置でマスターボリュームのオートメーション(横線)をクリックします。
するとポイントが追加されます。
再生バーを音の鳴り始めに合わせるのはポイントを追加する位置の目安にするためですので、別に必須ではありません。
このポイントよりも少し前に新たにポイントを追加し、ボリュームを最低値にセットします。
ポイントはドラッグで移動できます。
不要なポイントは右クリック→「ポイントの削除」から削除できます。
さらに一番最初にあるボリュームポイントも最低値に設定します。
これで音が鳴り始めるまでは完全に無音で、音がなる直前に素早いフェードインが掛かります。
フェードインの時間はごく短くて構いませんが、ゼロにすると不自然になる事があるので避けてください。
同じ要領で、今度は曲の終わりにフェードアウトを掛けます。
曲の終わりはリリース音やリバーブ音があるので、波形を頼りにするのではなく実際に音を聞きながら自然になるようにフェードアウトを調整します。
フェードインとフェードアウト処理をすると以下のようになります。
書き出し範囲の設定
最後に書き出しする範囲を設定します。
大抵のDAWでは選択範囲のみをオーディオに書き出しする機能があり、Reaperにもあります。
これは単純に音の鳴り始めから終わりまでを範囲選択すればいいだけです。
しかし普通に選択しただけでは範囲選択をするたびに微妙にズレが生じてしまいます。
一回きりの書き出しならそれでも構いませんが、後日ミックスのやり直しが必要になった場合など、前回の書き出し範囲とズレがあると困ることがあります。
少し工夫して選択範囲を簡単に設定しましょう。
新規トラックを作り、ここに「挿入」→「空白のイベント」で空白イベントを追加します。
この空白イベントを、音の鳴り始めと終わりまでの長さに設定します。
曲頭でいきなり音を出すと環境によっては頭が欠けてしまう事があるため、0.5秒程度の無音部分を作り余裕を持たせておきます。
トランスポートの表示は「Measures」(小節単位)から「Time」(秒数単位)に変更したほうが秒数の調整がやりやすいです。
曲の終わりはフェードインの完了後であれば割と適当でも構いません。
ただし自主制作CDを作る場合などは、本来のマスタリング作業(曲間の秒数を調整する作業)をすることなく、ミキシングして書き出したオーディオファイルをそのままCDライティングソフトで書きこむことも多いでしょう。
その場合はある程度の無音時間を持たせておかないと曲間が詰まりすぎてしまいますので注意してください。
後はこの空白イベントをダブルクリックすると、選択範囲がこのイベントの範囲に設定されます。
これで選択範囲を解除しても、後から何度でも同じ選択範囲を設定する事ができるようになります。
レンダリング開始
ようやくオーディオの書き出しです。
手順はMIDIデータをオーディオデータ化した時と同じで、「ファイル」→「レンダリング」を選択します。
特別な理由がない限りはサンプルレートは「44100」Hzに、WAVビット深度は「16bit」に設定してください。
44100Hz(44.1kHz)/16bitというのは音楽CDと同じ音質設定です。
この設定でないと正常に再生できない場合があります。
ステレオ設定は「Stereo」に設定してください。
出力ファイル形式は「WAV file output」にしてください。
出力ファイル形式は他にもMP3(要・lameプラグイン)やFLAC、OGGなどが選択可能ですが、特に理由がなければWAV形式で出力します。
とりあえずWAVファイルがあれば後でフリーソフトなどで好きな形式に変換可能です。
レンダリング範囲は「選択範囲をレンダリング」にします。
これで先ほど設定した選択範囲のみが書き出されます。
後は出力先、出力ファイル名を自分のわかりやすいように設定してください。
以上の設定が終了したら「レンダリング」をクリックしてください。
多少の待ち時間の後、設定した場所にミキシングされたWAVファイルが書き出されます。
ミックスダウン後
WAV書き出しが終了したら、Windowsメディアプレイヤー等の音楽プレイヤーで正常に再生できるかを確かめてみてください。
問題ないようなら、後はCDに焼いたり、MP3等にしてネットで配信したり、動画のBGMファイルとして使用したりと自由に使用する事が出来ます。